初恋のうたを、キミにあげる。
せっかく森井くんが作ってくれたチャンス。怖くても不安でもきちんと向き合わなくちゃ。
お母さんの方へと向き直ると、「そんな大きな声出すのね」と驚かれてしまった。
家で会話するときはもっと小さな声で、なに言っているのか聞こえないって言われてしまう。
大きな声だって、本当は出せる。
それなのに不安が上回って、うまく出ないだけだ。
***
家の中に入って、ダイニングテーブルを挟んでお母さんと向かい合う。
流れる沈黙に手に汗がじわりと滲んでいく。
きっと森井くんの言っていた私がお母さんに話すのを待ってくれているんだと思う。
意を決して口を開く。
苦しい呼吸をはき出すように、声を外へと逃がした。
「私……髪の毛染めたの」
「え、髪? どういうこと? 黒いままじゃない」
そうだ。この説明では、不足している。