初恋のうたを、キミにあげる。
ぎこちなくても、詰まってしまっても、一言ずつ伝えていく。
自分で染めて失敗して明るくなりすぎてしまったこと、それで森井くんに助けを求めて黒く戻してもらっていたこと。
だから、森井くんはなにも悪くないし、むしろ悪いのは迷惑をかけた私だということ。
「髪、なんで染めたの? なんかあった?」
「ぁ……」
違う。なにかがあったわけじゃない。ただ、ずっと興味があったからチャレンジしただけ。
「いいわよ、ゆっくりで。ちゃんと聞くから」
「……染めて……みたかったの」
ただ純粋にやってみたかった。自分を変えてみたかった。
それだけだ。森井くんの髪色の憧れたっていうのもあるけれど。
「え、それだけ?」
「う、うん」
表情がこわばっていたお母さんが大きなため息を吐いて、くたりとテーブルの上に伏せた。
「なんだ、そっか。お母さん、勘違いしちゃったわよ。不満があって爆発して、染めてやるーってなったのかなって」
「……ふ、不満があるのは自分になの」
「自分?」
「っ変わりたくて!」