初恋のうたを、キミにあげる。



「今までちゃんと聞いてあげられていなかったのね。これからはお母さんも気をつけるから。今夜はもっと星夏の話、聞かせてくれる?」


堪えていた涙がぽたりと零れ落ちる。

一度零れてしまったら、止められなかった。


泣きじゃくりながら頷く私をお母さんは落ち着くまで、傍で見守ってくれていた。



夕飯を食べたあと、久しぶりにお母さんとリビングのソファに腰をかけて、ふたりで話をした。


今まで話せなかった小・中学生の頃のことをやっと打ち明けることができた。


人と話すのが怖くなったことや、自分の声のこと。

一つひとつ、当時の痛みと向き合いながらお母さんに自分の言葉で伝えた。



お母さんは「今まで気付けなくてごめんね」と言って、静かに涙を流していた。


泣かせたくなかった。自分の娘がいじめられていたなんて知られたくなかった。


けど、お母さんは「勇気を持って話してくれてありがとう」と抱きしめてくれた。



私はずっと自分のことを話さずに、わかってほしいだなんて勝手な気持ちを抱いていたんだ。

だけど、やっぱり言葉にしないとわかってもらうことなんてできない。



言葉は簡単に人と傷つける。


だけど、人を癒すのも言葉なんだ。






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