初恋のうたを、キミにあげる。



その夜、持っていた少女漫画を読み漁った。

彼を見つけるだけで心が躍って、話せるだけで舞い上がって、近づきたいと願ってしまう。

そっか、そうだったんだ。

熱を持ったこの感情は、初めての恋だった。


「私が……好き?」

口に出すと恥ずかしくなってくる。

私、森井くんのことが好きなんだ。


ベッドに寝転んで胸に手を押し当てる。

どきどきがおさまらない。


手を掴まれたあのときも、好きだからあんなに緊張したんだ。

どうしよう。好きって思って、この先はどうしたらいいんだろう。


漫画の中では、さまざまなパプニングが起こって距離が縮まっていっているけれど、現実はきっとそう上手くはいかない。

この想いをどうすることが正解なのかわからないけれど、もっと近づきたいだなんて欲がでてきてしまう。


まずは今日のお礼をきちんと森井くんに伝えなくちゃ。


『今日は本当にありがとう』

前回以上にメッセージの内容に悩んだものの、結局この一言を送ってしまった。

意識してしまうとなおさらどう送ればいいのかわからない。




『どういたしまして』

その一言で、心が一気に浮上する。

たった一言の返信がこんなにも嬉しいものだなんて思わなかった。

さらに続けて、メッセージが送られてきて、どきりと心臓が跳ねる。



『今度は失敗しないように。メーカー、これな。女性用のだと、この色が近い』


森井くんが使っているヘアカラーのメーカーのURLが送られてきた。

……同じ色にしてもいいってことだよね?






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