初恋のうたを、キミにあげる。
「なになに? あやしー!」
「木崎、空気読んで静かにしてやれよなー」
「だって、〝昨日〟って言ってた! 詳しく聞かせて! 気になる!」
木崎さんが勢い良く抱きついてきたので体制を崩してよろけてしまう。
すると、立ち上がった森井くんが私の腕を掴んでさせてくれた。
「ここ、うるさいから行こう」
「へ?」
森井くんは私の腕を引いて廊下へと連れ出す。
後ろから木崎さんや大城くんが騒いでいる声が聞こえたけれど、私には振り返る余裕がなかった。
触れられているだけで、こんなにドキドキする。
森井くんは細身だけど、手は大きくて、力も強くて、男の子だ。
廊下を抜けて、階段を下っていく。
二階まで降りると、自動販売機の前で足を止めた。どうやらここが終着点らしい。
「あの、ジュース受け取ってくれる?」
「いいって言っても、なにかしらお礼したいって言うつもりだろ」
「う、うん」