初恋のうたを、キミにあげる。
「これは俺から」
「こ、これじゃ、お礼にならないよ!」
私が森井くんにメロンソーダを買って、森井くんが私にメロンソーダを買ったら、ただ交換しただけで、お礼じゃなくなってしまう。
「いいじゃん。俺が渡したいだけだし」
「で、でも!」
「いいから。お金はいらない」
「え……も、森井くん?」
お金を払おうとすると私の手を森井くんが掴む。
再び手を握られるような形になり、心臓が大きく跳ねた。
「俺は小宮さんには奢らせない主義なんで」
「へ?」
呆然と立ち尽くす私の頭を森井くんが軽く撫でて、「戻るよ」と言って歩いていく。
触れられた手も頭も、貰った言葉も全部熱を帯びて私をドキドキさせていく。
唯一冷たい握りしめたメロンソーダが、しゅわしゅわと弾けていった。