初恋のうたを、キミにあげる。


***




家に帰って、お母さんから頼まれた空のタッパーをリュウくんの家に届けに行く。

リュウくんの家は私の家のふたつ隣。

そして、舞花ちゃんの家はリュウくんの家の目の前だ。


小さい頃からよく家にお邪魔していて、私たちはお互いに家のインターフォンを押さない。

庭へと回りこみ、一階にあるリュウくんの部屋の窓ガラスをノックする。


「リュウくん、いる?」


窓ガラスがゆっくりと開けられる。

部活から帰ったばかりといった様子のリュウくんが、学校のジャージ姿のまま立っていた。



「おう。どうした?」

「これ、お母さんから。借りていたタッパーだって」

「おっけ。渡しとく」


入るように促されて、久しぶりにリュウくんの部屋にお邪魔する。高校に入ってからは一度もきていなかった。

最後に入ったのは高校受験が合格して、舞花ちゃんと三人でお祝いしたときかな。


「部活、おつかれさま」

「サンキュ。もー、へっとへとだよ」

「サッカー部、上下関係が厳しいんだっけ?」

「そうなんだよなぁ。中学で上級生になっても、高校になるとまた下っ端からだから。今の三年が結構うるさくてさー」


そんなことを言いながらも、リュウくんは楽しそうに話している。

部活帰りに部活のメンバーで寄り道して、アイスを食べて帰るのが最近のブームだそうだ。



「星夏さー」





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