初恋のうたを、キミにあげる。
「どこか痛む?」
「も、森井くん……」
私の目の前にしゃがみこんでいる森井くんと視線が交わる。
視界の隅で、大城くんが木崎さんと先輩の間に入ってくれているのが見えた。
……よかった。これでこの場はおさまるはずだ。
「手、血が滲んでる」
「えっ」
森井くんが私の手を掴んで、眉根を寄せている。
先輩の爪で怪我したんだ。うっすらと血が滲んでいるけれど、そこまで深いわけではないさそうだ。
……怖かった。
だけど、ほんの少しでも木崎さんを守れたかな。
結局突き飛ばされちゃったけど、木崎さんに怪我がなくてよかった。
「ごめん」
「……どうして、森井くんが謝るの?」
「もっと早く助けに来れたら怪我をさせずに済んだ」
悔しそうに顔を顰める森井くんに必死に首を横に振る。
私は数秒止めるくらいしかできなかった。
森井くんたちが来てくれなかったら、どうなっていたかわからない。