初恋のうたを、キミにあげる。



「立てる?」

「う、うん。ありがとう」

森井くんに支えられながら立ち上がると、誰かの野太い声が廊下に響いた。



「喧嘩をしてるやつら、全員名前とクラスを言え!」


怒りを纏って現れたのは生活指導の先生だった。

あまりの迫力にびくりと肩を震わせる。


森井くんがこっそりと「小宮さんは逃げて」と言ってくれたけれど、私は首を横に振った。



私だけ逃げることなんてできない。

先輩たちと木崎さんになにがあったのかまではわからないけれど、今回の騒動が起きたときからここにいた。だからこそ、証言できることがきっとあるはずだ。




***



この後、生活指導の先生に進路指導室へと連れて行かれ、騒動について詳しく説明させられた。


先輩たちが一方的にしてきたということは目撃者もいたため、信じてもらえたみたいで、私たちはすぐに教室へ帰してもらえた。


けれど、あっという間に噂が広まったらしく、私というよりも木崎さん、森井くん、大城くんへの視線が集まっているのを感じた。






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