初恋のうたを、キミにあげる。
***
翌朝は小雨だった。
けれど、私の気持ちはもう憂鬱じゃない。
自分にできることはどんなに不格好でも言葉で伝えることしかないんだ。
どんよりとした灰色の雲が空を覆い、しとしとと降る雨の中を歩いていく。
アルファルトに弾ける雨が靴下にしみて、ぺたりと肌に張り付いている。
「ねえ、星夏。なんか森井たちがクラスメイトをいじめてるって話聞いたんだけど、それって星夏のこと?」
「え。いじめ……?」
弾かれたように顔を上げて、傘が大きく揺れる。
冷たい雨が頬にぽたりと伝った。
「いや、本当のことじゃないってことはさすがに私でもわかってるけど、その噂の相手って星夏のことなのかなって思ったから」
「……多分、そうだと思う」
「やっぱりそうよね」
昨日の先生が聞いてきたのも、噂が流れていたからだ。
もしかして、森井くんたちが私から離れたのは、これ以上誤解されないため?
きっとそれは自分たちのためじゃなくて、私のためだよね。
私が知っている彼らは、そういう人たちだ。