初恋のうたを、キミにあげる。
話したことがない人たちだ。
だけど、怖がって動かなかったら今までとなにも変わらない。
進め。震える指先を握りしめて、弱気になる心をしっかりと前を向かせる。
今の私にしかできないことがあるはずだ。
深く息を吸って、心を落ち着かせてから女の子たちの方へと歩み寄る。
「ぁ、あの!」
裏返ってしまって逃げ出したくなるくらい恥ずかしい。
だけど、踏ん張れ私。
「え……どうしたの小宮さん」
「森井くんたち、どこに連れて行かれたかわかる?」
女の子は一瞬きょとんとしたものの、「多分、進路指導室かな?」とおしえてくれた。
「っありがとう!」
教室を出て廊下を走り抜ける。
構内を走るのも、階段を駆け下りるのも初めてだった。
驚いた様子で私を避けて道を開ける人たちもいる。
普段ならこんなことできないけれど、今はなりふり構っていられなかった。
心臓がドクドクする。
怖くてたまらない。
足が宙を蹴るみたいな感覚によろけそうになる。
だけど、行かなくちゃ。