初恋のうたを、キミにあげる。
二階にある進路指導室には明かりがついている。
ドアノブにかけようとする手が震えて、力が入らない。
切羽詰まっていても、私はとことんカッコ悪い。
「あのなあ、木崎」
中から生活指導の先生の声が聞こえきた。
木崎さんの名前を呼んでいたので、ここに彼らがいるのは間違いなさそうだ。
心を落ち着かせるために深呼吸をしても、心拍数は上がったままで、手の震えも止まらない。
情けなくて、無様で、こんな自分がいやになる。
けれど、それでも踏み出すんだ。
自分を変えるんだ。
ドアノブに手をかけて、勢い良くドアを開ける。
「しつれいします!」
部屋の中には生活指導の先生と、森井くん、木崎さん、大城くんがいて、一斉にこちらに振り向いた。
「っ先生!」
私が来たことにみんな驚いている様子だけれど、止められない。
言葉が、想いが溢れ出す。
「昨日先生が言ってたこと、全部誤解です!」
普段の自分からは考えられないくらいの大きな声が出た。
緊張や不安を押し込めて、伝えたい気持ちを口にする。
「森井くんも木崎さんも大城くんも私に本当に優しくしてくれて……ずっと学校が嫌だったけど、楽しいって思えるようになったのはみんなのお陰なんです! 私の声を笑わずにいてくれた。……そのことが本当に嬉しかったんです」
涙で前が見えない。
瞬きをするとどんどんこぼれ落ちていって、顔がくしゃくしゃになる。
「そ、それにっ」
きっとみっともない泣き顔。
だけど、俯いてなんていられない。
涙で視界が歪んでも、堂々と前を向いて伝えなくちゃ。