初恋のうたを、キミにあげる。
「寂しい思いさせて、ごめんね」
私は少しだけ首を横に振って、木崎さんを抱きしめ返す。
勢いで話してしまった部分もあるからめちゃくちゃなことを言ってしまっていないか不安だけど、ちゃんと伝えられたかな。
「ごめんね、小宮ちゃん。来てくれて、ありがとう」
「木崎さん……私、寂しかった……みんなと話せないなんていやだよ」
心に溜まった想いがようやく言葉となった。
私の声は、私の想いは、大事な人たちを救えるだろうか。
「わかったから、落ち着け」
先生が困ったように頭を掻いて、ティッシュの箱を私に渡してくれた。
木崎さんと離れて、お互いに涙で濡れた顔を拭く。
「小宮との件は話をして大体把握した。今の光景を見て、いじめだなんて思わない。だから、小宮も一旦落ち着いてくれ」
「は、はい」
さすがに先生も彼らが私を虐めているわけではないと納得してくれたようだった。
緊張が解けて、力が入らなくなり、床に座り込んでしまう。
「小宮ちゃん、大丈夫!?」
木崎さんが慌てて私の前にしゃがんで顔を覗き込んでくる。
「だ、大丈夫。ちょっと気が抜けちゃって……けど、よかった」
「勇気出して来てくれて、本当にありがとね」
優しく頭を撫でてくれるのが、照れくさいけれど嬉しくて再び涙を流しながら笑った。
ずっと声をあげるのが怖かった。
声を馬鹿にされるのも、気持ちを否定されるのも、伝わらないのも怖くてたまらなくて、自分の中に引きこもっていた。
けれど、踏み出すことでいい方向に変わっていくことだってあるんだ。
声をあげてよかった。
勇気を出せた自分を少しだけ誇らしく思えて、前よりも強い自分になれた気がする。
「事情はわかったから、木崎の件も今後話し合っていこう」
先輩との件も解決してくために、今後木崎さんとちゃんと話そうと言っていた。
またああいう揉め事が起こらないようにするためにも、なにかあったらまずは先生に報告すると木崎さんも約束をした。
授業があるので先輩たちの件の話は一旦終わりになり、私たちは四人で教室へと向かう。
「……泣きすぎ」
隣を歩く森井くんが苦笑しながら私の顔を覗き込んできた。
恥ずかしくなって慌てて視線をそらす。
「だ、だって」
「でも、ありがとう。嬉しかった」
再び視線を森井くんへ向けると、今度は森井くんが顔を背けてしまった。