初恋のうたを、キミにあげる。



私と同じ好きだ。

好きな人と両想いになれた奇跡みたいな出来事に嬉しさがこみ上げてくる。

好き。私も森井くんのことが好き。

素直な気持ちを言ってしまいたい。


けれど、秘密が心を急激に冷やしていく。

森井くんは私が歌い手のナツだということを知らない。


このまま伝えずにいればいいのかもしれない。

だけど、ナツのことを知っている森井くんに私の正体を隠したまま付き合うのは嫌だ。


ちゃんと、伝えなくちゃ。



「あの!」

「ん?」

「今夜、八時。……返事をします」

「……八時?」


訝しげに眉を寄せる森井くんにとにかく八時に携帯電話を見てほしいとお願いをした。


これが私なりの答えで、秘密を全て伝える方法だった。






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