初恋のうたを、キミにあげる。


今回はパスワード設定をしたので、このパスワードを知っている森井くんしかここには入れない。


リスナーは一人。ナツの、小宮星夏の、生放送が始まった。


「こんばんは、ナツです。放送にお越しいただき、ありがとうございます。今夜も楽しんでいただけると嬉しいです」

曲の再生ボタンをクリックして、イントロが流れ始める。



「それでは聴いてください。<遅咲きの想い>」


何度も繰り返し聴いたので歌詞を見なくても覚えている。

私の心に馴染んだ初めて恋する女の子の曲。


歌いながら、目を瞑ると今までのことが脳裏に浮かんできた。



お互い勝手に決められた放送委員。


私の声を笑わないでくれて、話をちゃんと聞いてくれた森井くん。

口調や態度は冷たいように見えるけれど、本当は優しくて困ったときに手を差し伸べてくれる。



音楽の趣味もあって、好きなアーティストのとき目をキラキラと輝かせる姿が少し幼く見えて好き。



私を呼ぶ声も、触れた指先も、優しげな微笑みも、ぜんぶ好き。



いつのまにかこんなに好きで溢れていた。






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