初恋のうたを、キミにあげる。
「堂々としてなくちゃ」
決心したところで、インターフォンが鳴った。
慌てて階段を駆け下りる。
リビングでモニターを確認すると森井くんが映っていた。
姿を確認した瞬間、心音がさらに速くなっていくのがわかった。
全身が心臓の音が伝わって来るくらい大きくて、緊張と不安が入り混じる。
背筋を正して、玄関へと向かっていく。
思いっきり息を吸い込んで玄関のドアを開けると、青い傘をさした森井くんが立っていた。
「急にごめん」
「……ううん」
ぎこちなく流れる空気。
告白のときのような雰囲気とは違う。お互いに顔色をうかがっているような気がする。
アスファルトを叩きつける雨音があることが救いだった。
「ナツの件」
「……うん」
「正直驚いた」
その言葉に氷でも当てられたように心がひやりとして、足が竦みそうになる。
「そう、だよね」
森井くんが好きだと言っていた歌い手のナツの正体が私だなんて、きっと思いもしなかったよね。
明るくてよく笑うナツと私じゃ違いすぎる。
不安がさらに膨らんで心が押し潰されそうだ。
「ナツは好きだけど、小宮さんの好きとは違う」
「……うん」