初恋のうたを、キミにあげる。
小宮さんと森井くん
*その後の話
<小宮さんと森井くん その1>
小宮さんはかなり鈍感だと思う。
「ん」
一緒に歩く帰り道、手を差し出すと不思議そうに小宮さんが首を傾げた。
なにかに気づいた様子で声を上げた小宮さんが、手に持っていたメロンソーダのペットボトルが俺の手に乗せられる。
「えっと……飲みたかった?」
「いや」
そうじゃないけど、そもそも飲みかけなのに俺が飲んでもいいのか?
「今は大丈夫」
メロンソーダを小宮さんに返す。
じりじりと照りつける太陽のせいで目がちかちかする。コンクリートの少し焼けたような熱気をまとった匂いがして、顔を顰める。
まだ七月上旬なのにかなり暑い。
「最近一気に暑くなったね」
「溶ける」
俺の言葉に小宮さんが小さく笑った。
放送委員になったばかりの頃はこんな風にあまり笑わなかったけど、最近ではよく笑ってくれるようになったと思う。
「小宮さん、手出して」
「へ? う、うん」
おずおずと出された小宮さんの手を掴む。
突然のことに驚いたのかびくりと身体を揺らして、硬直してしまっている。
「あ、」
「なに?」
「と、溶けるんじゃ……」
「溶けません」
手を繋いだまま歩き出す。
夕方とはいえ外は暑い。
けど、小宮さんの顔が赤くなっているように見えるのはたぶん暑いからじゃない。
「森井くん……暑く、ないの?」
「手ぇ離したい?」
意地の悪い質問返しをすると、小宮さんが首を横に振る。
そして、消えそうなくらい小さな声で「このままがいい」と言った。
……本当小宮さんって可愛すぎて困る。