初恋のうたを、キミにあげる。
小宮星夏(こみや ほしな)ではなく、ナツとしての私は明るくてよく笑う。
言葉に詰まることなく、感情が喉元からするりと出てくる。
「今週もたくさんのメッセージをありがとうございます!いつもすごく嬉しいです!」
けれど、これは三十分間だけの放送の魔法。
時間がくれば途切れて終わってしまう。
「よければまた聞きに来てくださいね。それでは、また来週〜。ばいばーい」
配信終了ボタンを押して、今週の放送を終えた。
最近流行っている動画や音声を配信できるサイトで私は歌い手のナツとして活動している。
歌うことは好きだけど、自分の声が嫌いで人に笑われることが怖かった。
歌のときは少年のような少し低めの声と少女のような声を使い分けている。
けれど、私の地声は人より高め。
最近では人前で滅多に話さなくなった。
きっかけは地声に関する些細なことからだった。
『————星夏ちゃんの声ってさ、ぶりっこじゃない?』
『わかる。あの声、絶対作ってるよ』
『私もそれ思ってたー!』
小学生女子のよくあるただの陰口。
好きな子と話していたとか、そんなことからヤキモチを妬いた子が言い出して、周りが同調しだした。
それがどんどん広がり、小宮星夏は男子の前だと声を作っているぶりっ子とレッテルを貼られたのだ。