初恋のうたを、キミにあげる。
教室に行くと、たくさんの声が飛び交っている。
聞こえてくる笑い声があの頃とリンクして指先が震える。
怖い。聞きたくない。笑わないで。
あの頃と同じじゃないのに、私のことを笑っている人なんていないはずなのに不安が心を蝕んでいく。
「おはよ」
どうしてこんなに怯えてしまうの。
落ち着かなきゃ。あまり考えないようにしないと。
「おはよって言ったんだけど返してくれねぇの?」
「えっ」
振り返るといつのまにか私の後ろには森井くんが立っていた。
「おはよ、小宮さん」
チョコレート色の前髪の隙間から見える眠たげな眼差し。
昨日初めて話したときのような恐怖心は薄れている。
「お、おはよう、ございます。森井くん」
「うん」
うまく挨拶を返せなかったけれど、森井くんは満足そうに頷いて口角をつりあげた。