初恋のうたを、キミにあげる。



なにかまずいことを言ってしまったのかな。

どうしよう。もう話したくないって思われたら。


「けど、おもしろいな」

あ……笑った。


くしゃっとした笑顔は、小さな子どもみたいに無邪気で目が離せない。

森井くんのこと、もっと知りたい。でも、どうやって話したらいいんだろう。


聞いてみたことはたくさんあるけれど、言葉が上手くでてこない。



「……おもしろい?」

「小宮さんと話すと楽しいってこと」


キラキラと輝きはじめる私の視界には、チョコレート色の髪の男の子。


クラスメイトで、目立つグループで、放送委員。

知っていることなんてほんの少ししかない。


それでも、もっと近づいてみたい。


この形容しがたい想いを上手に伝えられる方法はあるのだろうか。



「とりあえず放送の件、よろしく」

「う、うん!」


音楽を流すだけ。けれど、初めてのことってやっぱり緊張する。



うまくできるかな。

……うまくできるといいな。






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