初恋のうたを、キミにあげる。
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金曜日。いよいよ、私と森井くんの担当の日がやってきた。
朝から緊張してしまって朝食のパンが喉を通らない。
「なにしてるの、星夏。早く食べちゃいなさい」
「あ……」
「なに? 体調でも悪いの? 大丈夫?」
心配そうに声をかけてくるお母さんに私はうまく言葉が返せない。
「えっと、その」
なかなか答えない私にお母さんが次第に苛立っていくのがわかった。
「具合悪いなら、熱計って。無理そうなら休みなさい」
ため息をつきながら耳にピアスをつけている。
共働きで朝はお母さんも忙しい。なので私がぐずぐずしていると大抵苛立たせてしまう。
「ち、ちが」
「なに? 違うの?」
「体調は……その」
「もう、ハッキリ言いなさい。まったく」
違うの。体調は悪くないの。
ただ、今日は放送委員の初仕事があるから緊張するんだ。
校内放送で音楽流すんだよ。
そんな会話すらできない。
私が話すのが遅いから。声が小さいから。