初恋のうたを、キミにあげる。
先を歩いていく森井くんの背中をぼんやりと見つめる。
森井くんは不思議だ。私の心を軽くしてくれる。
「なにしてんだよ。忘れ物でもした?」
私が立ち止まっていることに気づいた森井くんは振り返って、不思議そうにしている。
「も、森井くんは……かっこいい、ね」
「は?」
私が森井くんの立場で、不安になっている人が近くにいたら同じ言葉をかけられないと思う。
すごいな。森井くんって。
「私も……森井くんみたいになりたいな」
「俺みたいって……絶対ならないほうがいい」
私も彼みたいに誰かを励ませるような人になりたい。
いちいちおどおどしているような自分でいたくない。
「……小宮さんってやっぱ変わってる」
「あ、あのごめんなさい」
「なんで謝るんだよ」
森井くんの顔が険しくなる。私の発言で怒らせてしまったのかもしれない。
どうしよう。謝るなって言われたし、なんて言えば正解なんだろう。
「いいから、早く行くぞ」
結局なにも言えずに、歩き出した森井くんの背中を追いかけた。