初恋のうたを、キミにあげる。


***



主な流れや機材の使い方は先生が一通り説明をしてくれたので、思っていたよりは難しくなさそうだった。

私と森井くんのふたりで持ち寄ったCDを流し始める。

マイクのスイッチは切ってあるので、こちら側の音声は流れないらしい。

間違って押さないように気をつけないと。



「この曲、いいよなー」

焼きそばパンの袋を開けた森井くんがぽつりと呟く。

私もお気に入りの曲だった。

アップテンポで元気がでる。憂鬱なときと聴くと気分が上がるんだよね。



「小宮さんは、このアーティストでどれが一番好き?」


お弁当箱の蓋を開けて、お箸を握りしめながら考える。

好きな曲……どれも好きだけど、それじゃあ答えになってないよね。えっと……どうしよう。




黙り込んでしまって、はっと顔を上げる。

私のこういうところが人を苛立たせてしまうんだ。


はやく答えないと。





< 41 / 176 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop