初恋のうたを、キミにあげる。



言葉がうまく出てこなくて、説明も下手。

なにを言いたいのか自分ですらわからないくらい話したいことの整理がつかない。


こんな自分が嫌になる。

それなのに森井くんは急かすわけでも、苛立つわけでもなく、焼きそばパンを頬張って私のことを見つめている。



その目は、ただ純粋に私の言葉を待っていてくれているようだった。


どの曲も好き。だけど、その中でもよく聴きたくなる曲。

そうだ、あった。好きでよく聴いていた曲。



「……サクラの音って、曲……わかる?」

「わかる。あれいいよな。爽やかでさ。春頃よく聴いてた」

「わ、私も! イントロからすごく綺麗で好きなの」


言葉を待ってくれる。耳を傾けてくれる。返してくれる。

それがこんなにも嬉しいことだなんて。




「そうだ。小宮さんって歌い手って知ってる?」

「えっ!」

まさか森井くんの口から〝歌い手〟という言葉が出てくるとは思わなくて大袈裟なくらい驚いてしまった。





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