初恋のうたを、キミにあげる。
ヨルニカエルはロックでかっこいいし、冒頭が早口で歌わないといけないから難しいのに歌いこなしている春宇海さんはさすがだと思う。
私は何度も噛んじって納得できる形にならないから、未だに動画配信できていない。好きな曲だからいずれは歌えるようになりたいけれど、私にはハードルが高い。
「あとさ、ナツって歌い手はわかる?」
どくんと、心臓が大きく跳ねた。
あまりの驚きに反応ができず、ただ瞬きをゆっくりするしかできない。
ナツ、なんてきっと私以外にもたくさんいる。ありふれた名前で珍しくなんてない。
違う。きっと別人だ。
動揺して変に思われないようにするには黙っているしかできない。
大きくなっていく心音にだんだん焦っていく。
どうしよう。どう答えるのが正解なの?
「すっげぇ、伸びやかな歌声でさ綺麗なんだよな」
「……そう、なんだ」
「そっか、ナツは知らないんだ。すげー、いいよ」
森井くんの携帯電話の画面に表示されている画面に視線を向ける。
「ほら、この人」