初恋のうたを、キミにあげる。
ひまわりのアイコンで、短めの自己紹介文。
動画のアップ数やフォロワーの数。
全てに見覚えがあった。
一瞬、呼吸が止まる。
————間違いなく私だ。
「羽花って歌手の声の系統と似てるんだ。透明感があるっつーか、本当綺麗なんだよな」
森井くんにそんな風に言ってもらえて嬉しい。
……嬉しいけど、言葉が出てこない。
「この曲とか何度も聴いてる。あとは生放送も週一でやってるから、毎週楽しみなんだよな」
もしも私がナツだと知られたら、どうなってしまうんだろう。森井くんは馬鹿になんてしないと思う。
けれど、私みたいなやつがナツという架空の人物をつくって、本当の自分を隠しながら歌い手の活動をしているなんて、きっとがっかりされてしまうはずだ。
ナツの歌声を好きだと言ってくれて、応援してくれている森井くんに幻滅してほしくない。
「興味あれば小宮さんも今度聴いてみて。まじでおすすめ」
小宮星夏がナツだって知られたくない。
「……うん」
だから、私は頑張って微笑んだ。
隠しごとをするのは胸が苦しいけれど、それよりも知られるほうが怖いから嘘をつく。