初恋のうたを、キミにあげる。
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本当は今夜歌の生放送をしようと思っていたけれど、森井くんが聴いているかもしれないって思うと放送が怖くてできなかった。
お知らせのところに『しばらく生放送はできません』と書いて、ため息を漏らす。
ただの逃げだ。バレるとは限らないのに怖くてたまらない。
ネットの中でしか上手く話せないことが恥ずかしい。普段は言葉に詰まってしまうくせに。
どうしたらいいのだろう。まさか森井くんがリスナーだとは思わなかった。
ベッドに寝転がりながら、収納ラックの中に入っているCDを眺める。次の曲、どれがいいかな。
森井くんは他にどんなアーティストが好きなのかな。もっといろいろ聞いてみたい。
私も森井くんみたいにリストアップしてみよう。気に入ってもらえるといいな。
手を喉に当てて、唇を結ぶ。
私の声を笑わないでいてくれる。綺麗だと言ってくれた。
ナツの歌声も好きだと話していた。
森井くんと話せるようになってから、少しだけ話すのが怖くなくなった気がする。もっと話してみたいだなんて初めて思った。
目を閉じると、歌のことで饒舌になっている森井くんの姿が思い浮かぶ。
同じクラスの男の子。少し怖そうで、素っ気ない話し方。
だけど、話してみると優しい。
閉じていた私の世界が少しずつ開かれて、苦しかった喉元のつっかえが溶けていく気がしていた。