初恋のうたを、キミにあげる。
ふと脳裏に森井くんの顔が思い浮かぶ。
チョコレート色の前髪の隙間から見える目が私に向けられるたびにどきりとする。
人に見られることが怖くて怯えているときの緊張感ではない、不思議な感覚。
「よかったじゃん」
「……うん」
「俺はさ、星夏が俺ら以外とやつと親しくなるのはいいことだと思う」
親しくなれているのかな。人に囲まれている森井くんにとっては私との会話なんてちょっとしたことなのかもしれない。
でも、私は少しでも会話ができることが嬉しい。
緊張して声が出なかった頃とは違って、森井くんに好きなアーティストの話をしたいって思っている自分がいるんだ。
「まあ、舞花は大好きなお前が自分から離れていくのが寂しいみたいだけどな」
「離れていくなんて……そんなことないのに」
「舞花は言い方きついとこあるけど、あいつはあいつで不安なんだろ。舞花にとって星夏はすっげー大事なんだよ」
私も同じだ。リュウくんも舞花ちゃんも大事な幼なじみで友達。それはこれからも変わらない。
「リュウくん、ありがとう」
「え?」
「私……リュウくんと舞花ちゃんにいっつも守られてばかりだね」