初恋のうたを、キミにあげる。



ポケットから取り出した携帯電話を見て、リュウくんが顔を顰める。


「……まじか。舞花、風邪ひいたから休みだって」

「え!」

「まあ、舞花のことだから明日には復活するだろ」


リュウくんが舞花ちゃんから届いたメッセージを見せてくれる。

舞花ちゃん、大丈夫かな。最近試合が近いから部活忙しいみたいだし、それで体調崩しちゃったのかもしれない。



「じゃ、行くか」

高校に入って舞花ちゃん抜きでリュウくんとふたりで登校するのは初めてだった。

学校に近づくに連れて周囲からの視線が気になっていく。

おそらくリュウくんの隣に舞花ちゃんがいるのならみんな見慣れているだろうから注目はしないだろう。



けれど、今は舞花ちゃんがいなくてリュウくんと私のふたりきり。誤解されてしまうかもしれない。



「あ、あの、リュウくんっ」

「おはよう」


後ろから声がして慌てて振り返った。

森井くんが私とリュウくんのことをじっと見つめて立っている。





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