初恋のうたを、キミにあげる。



「あー、俺ら幼なじみなんだよね」

「……そうなんだ」

「だから、心配すんなよー。付き合ってるとかじゃないし」

なぜか森井くんがじっと私を見つめてきたかと思うと、おもむろに携帯電話を取り出して私の前に差し出してきた。


「連絡先、教えて」

「えっ!?」

突然のことに驚いていると、隣にいたリュウくんが何故か興奮気味に「うおー!」と叫んでいる。


「放送委員の曲決めのことで連絡したいし」

「あ、うん」

そういうこと、か。特別な理由なんてあるわけない。私たちは同じ委員って共通点だけ。


「あと、おすすめの曲とかあれば教えてほしいし」

「あ、うん。えっと……」

「これ、俺のID。ここに入力して。……そ。これでオッケー」


森井くんに操作の仕方を教えてもらって、私の連絡先一覧に<森井慎>という名前が入る。

頬が緩みそうになる。少ない連絡先の中に人が増えた。高校に入って初めてのことだった。






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