初恋のうたを、キミにあげる。
「不意打ちすぎんだよ。本当読めない」
読めない? どういう意味だろう。
顔を上げた森井くんは真剣な表情で私を見つめると、わずかに口元を緩める。
「小宮さんってさ、可愛いよな」
「えっ!?」
突然のことに驚いて後ずさる。なにかの冗談だよね?
「自分じゃ気づいていないだろうけど」
「あ、あの、森井くん?」
一歩、距離を縮められてどきりと心臓が跳ねる。
頭の中は大混乱で、まばたきを繰り返すので精一杯だった。
「ほら、不意打ちでそういうこと言われると動揺するだろ」
「うっ」
やっぱり冗談だった。言われ慣れていないから、一瞬でもどきっとしてしまって恥ずかしい。
熱い顔を隠すように俯くと、森井くんが私の横を通過していく。
「でも、可愛いのは本当」
その声が耳に届いて振り返ったときには、森井くんの背中が遠ざかっていた。
顔がぶわっと熱くなって、心臓の鼓動が速くなっていく。
きっとこれも冗談だ。
けれど、森井くんの言葉に翻弄されてしまい、動揺が隠しきれない。
頬の熱を冷ますように両手で覆って、その場に立ち尽くした。