初恋のうたを、キミにあげる。
「ねーね、小宮さんって西島くんと仲いいの? 今朝一緒にいるの見かけたからさ」
派手で少し気が強そうな見た目の木崎さんは私の中では怖そうって印象だった。けれど、気さくに話しかけてくれている。
「ぁ……」
どうしよう。早く答えないと苛々させてしまう。
でも、答えたら声を聞かれてしまう。
喉がきゅっと苦しくなって、わずかに開いた口からは空気が抜けていく。
〝ぶりっ子〟
〝それ、地声じゃないよね?〟
〝可愛いとか思ってんの? 普通にキモいわー〟
いやだ。思い出したくない出来事が溢れ出てきて、喉元を締め付ける。
息苦しくてたまらくなった私の耳に届いたのは、たったひとこと。
「大丈夫」
その声に我に返り、顔を上げる。
視線が交わると、森井くんは頷いてくれた。
「こいつ、アホだけど悪い奴じゃねーし。笑ったりしない」
不思議と彼の言葉で肩の力も、喉元を締め付けていたなにかもすっと溶けるように消えていった。