初恋のうたを、キミにあげる。


「……私の声」

「うん」

「笑わないでいてくれた」

そのことが嬉しかったのと同時に安心したんだ。

立ち止まった森井くんがこちらを見て、「あのさ」と話を切り出す。私も足を止めて、視線を合わせる。



「確かに小宮さんの声は高めで、そのことをこの先もなにか言ってくるやつもいると思う。いやな思いもすることがあるかもしれない」

「……うん」

「けど、小宮さんの声は個性だろ。笑ってくるようなやつらのために自分を殺すなよ。俯く必要なんてない」


わずかに下がりかけた顎をぐっと止める。

俯くのが癖になっていた。

そうすれば見たくないものを見なくて済んでいたし、私のことを笑っている人たちにどんな表情をしているのか知られたくなかった。



「堂々と前向いてろよ」

顎を上げて、目一杯鼻から空気を吸い込む。

ほんの少しだけ鼻の奥がツンと痛んで視界が滲んだけれど、自然と口元が緩んだ。




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