初恋のうたを、キミにあげる。
「うん」
前を向けば長い廊下があって、生徒たちが話しながら歩いていたり、立ち止まって窓から外を眺めている人や友達の元に駆け寄っている人もいる。
そして、振り返った木崎さんが「早く早く!」と笑顔で手招きをした。
「小宮さん、行こう」
森井くんに軽く背中を叩かれる。そのはずみで一歩を踏み出した。
一歩って思っていたよりも重たくなくて、踏み出してしまえば案外進んでいけるのかもしれない。
***
購買は初めてのことだらけだった。
パン以外にも飲み物やお菓子、文房具なんかも売っていて品揃え豊富だ。
「すごい……食べ物以外も売ってる」
シャーペンの芯とかなくなったら、ここに買いに来ればいいんだ。
驚きのあまり見入っていると、木崎さんに「そんなにびっくりするの!?」と逆に驚かれてしまった。
「あ、でもここって要注意だよー。職員室近いからね」
「職員室?」
「そ。生活指導の先生とか通りかかると、本当厄介」