初恋のうたを、キミにあげる。
まるで微熱みたい
五月。ゴールデンウィークが過ぎ去り、私と森井くんの放送委員担当も二回目を無事に終えた。
好きなアーティストの話をしたり、私が好きそうと言ってお菓子を時々くれる。
少しずつだけど、木崎さんや大城くんとも話すようになった。
私たちが話していると不思議そうに見てくる人も多い。
派手で目立っている彼らと一人でいて影が薄い私の交流はおそらく奇妙な光景なんだと思う。
「五秒以上目を合わせるってハードル高くない!?」
木崎さんが雑誌を見ながら、声をあげる。
どうやら恋愛テクニックというページを読んでいるらしい。それを見た大城くんも「無理だな」と笑っている。
「試してみる?」
「へ?」
隣の席に座った森井くんがまっすぐに私を見つめてくる。
ふいに私に話題を振られたので驚いて答えに詰まってしまう。
試すって視線を合わせることだろうか。
「一」
心構えをする前に、森井くんのカウントが始まってしまった。
止めるタイミングを失ってしまい、唇をきゅっと結んで硬直する。
真剣なその眼差しに心臓が高鳴り、思考が鈍くなっていく。
「二」
一秒間がとても長く感じて、顔に熱が集まっていくのを感じる。
けれど、私は逸らすことができず、ただじっと森井くんと目を合わせていた。
胸が苦しくて、呼吸がしづらい。
私の感情は慌ただしい。
言葉に表すのなら、そわそわして、ぎゅっとなって、ふわふわする。
この感情に名前をつけるのならなんだろう。
「三。………やっぱなし」
そう言って、森井くんが俯いた。
ドキドキがまだおさまらない。
きっと冗談で森井くんは言ったのだろうけれど、私はどうにかなってしまいそうだった。
「慎ちゃん? どうしたの」
私たちのやりとりを見ていなかった様子の木崎さんと大城くんが不思議そうに森井くんのことを見ている。
「なんか顔赤くない?」
「赤くない」
立ち上がった森井くんはそのまま廊下へと消えていった。
森井くんでも目を合わせるのは緊張するのかな。
「小宮さんも顔赤いよ」
大城くんに指摘されて、慌てて頬に手をあてる。
頬の熱を感じながら、ぎゅっと目を閉じた。