初恋のうたを、キミにあげる。
***
あれから舞花ちゃんとは普通に話すものの、どこかぎこちない。
それにあからさまに森井くんたちのことに触れてこなくなった。
現状は悪いことではないはずなのに、どうしてかモヤモヤする。私は舞花ちゃんを傷つけたままだ。
けれど、話を切り出せないまま一日が終わっていく。このままじゃダメだと思うのに言葉が出てこない。
この日も言い出すことができなくて、とぼとぼと一人で帰っていると薬局が目に止まった。そういえば、アレ見てみようかな。
少し緊張しながらも、目当てのコーナーに足を踏み入れる。
いつも通り過ぎることしかできなかったその場所にはたくさんの種類の髪の毛を染める箱が陳列されていた。
どのメーカーがいいのかさっぱりわからない。
色の種類も多くて、迷ってしまう。
ラズベリーブラウンとかハニーブラウン、なんて可愛くて美味しそうな名前ばかりだ。
あ……キャラメルブラウンって名前かわいい。
ダークブラウンだとあまり色が変わらなさそうだし、キャラメルブラウンにしてみようかな。
おそるおそる箱を手にとって、レジへと持って行く。
初めてのことをするのは怖いけれど、少しワクワクしながらヘアカラーの箱が入った袋を抱えて家へと帰った。