初恋のうたを、キミにあげる。


「黒染め……」

黒色のヘアカラーを使ったら、元どおりになるんだ。

そっか、そうだよね。普通あるよね。動揺していてすっかり頭から抜けてしまっていた。


「手伝おっか」

「……いいの?」

「今、俺ん家人いないし、ちゃんと黒に戻してあげる」

ほっと胸をなで下ろす。

森井くんに連絡してよかった。嫌な顔一つせずに手伝ってくれるなんて。



「ありがとう!」

「……うん。いや、いいんだけどさ。まあ、そういう反応だよな」

あれ? ここはちゃんとお礼をいうところだよね。

それなのに森井くんはなんともいえない表情で苦笑している。


「うちにストックしてる黒染めあるから使って」

「え、でも」

「別に気にしないでいいから」

「……ありがとう、森井くん」


森井くんには本当に感謝することばかりしてもらっている。

家に向かう途中もヘアカラーについていろいろと教えてくれた。


私が使用したメーカーのヘアカラーは写真の色よりも明るく染まるらしい。

それにキャラメルブラウンって私が思っていたよりも、結構明るめの茶色に染まるものなんだとか。もっとよく調べたり、森井くんに聞いてから決めればよかった。






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