初恋のうたを、キミにあげる。
***
森井くんの家は駅から徒歩十分くらいの場所にあった。
見上げると首が痛くなりそうなほど高いマンション。これって何階くらいまであるんだろう。
エントランスを抜けると、エレベーターが四つ並んでいる。まるでホテルみたいだ。
二つ目のエレベーターに乗り込むと、「耳変になるかもしれない」と言われてよくわからないまま頷いた。
どういう意味なのかは、エレベーターが二十階あたりを通過して実感した。
耳に膜が張ったような違和感。飛行機に乗ったときみたいな感覚だった。
「もうすぐつくから」
「う、うん」
「あと、あくびしたら治る」
森井くんの言った通りあくびをしてみると、膜のようなものは消えた。
二十四階に到着して、森井くんの後に続く。明かりが絞られた照明が足元を照らしてくれている。
ダークグレーの絨毯は足音を吸収していき、私達は無言のまま足を進めていった。
「ここ」
鍵を開けて森井くんが二四◯五室へと入っていく。どうやらここが森井くんの家のようだった。
「……お邪魔します」