初恋のうたを、キミにあげる。
「どうぞ」
あまり考えずにきてしまったけれど、リュウくん以外の男の子の家って初めて入る。それにふたりっきりなんだよね。
粗相のないように靴をきちんと揃えてから森井くんの後に続く。
きちんと整理整頓されている綺麗なリビングには、大きな窓ガラス。そこから見える絶景に開いた口が塞がらない。
「……すごい景色だね」
「あー、まあこの階だとな」
街が小さく見える。まるでテレビで見た高級ホテルみたい。
「俺の親、仕事で忙しくて放任なんだ」
「そうなんだ」
「けど、まあもう慣れたし、寂しいとかはないけどさ。あんまり人が家に上がることがないから、新鮮だな」
木崎さんたちもあまりくることはないのだろうか。
森井くんの家の事情のことはよく知らないから、あまり突っ込んだことを言ってはいけない気がして言葉を噤む。
「あった」
森井くんは黒染めの箱とタオルを持ってきてくれた。
「とりあえず、パーカー脱いでこれに着替えて」
「えっ!?」
「前ボタンの方が髪洗うときに服簡単に脱げるだろ」
渡された服は森井くんのもののようだった。黒いシャツで、前でとめる形になっている。
「い、いいの?」
「小宮さんが嫌じゃなければ」
「嫌……じゃない、です」
「……うん」
嫌じゃないけれど、照れくさくて俯いたままシャツを抱きしめる。
森井くんは「部屋いってるから、着替えておいて」と言ってリビングから出て行った。