初恋のうたを、キミにあげる。
大きな手と高い温度に、購買に行ったときに握られたことを思い出してしまう。
頬の熱を冷ますように手の甲を押し当てて、深呼吸をする。
森井くんといると、不思議な緊張をしてしまう。
「そうだ。これ、巻いて」
「……タオル?」
タオルを巻いて、その上から染めてくれるみたいだ。
けれど、それじゃあタオルが汚れてしまう。
そう伝えても、森井くんは洗えばいいし、気にしなくていいからと言って、肩まで覆うようにタオルをかけられた。
「そこ、座って」
ソファの下にクッションが敷かれて、そこに座るように促される。
ソファに座った森井くんの足の間に座るような感じになってしまい、身体に力が入ってしまう。
私の髪に森井くんの手が触れる。
「すっげーサラサラ」
「そ、そうかな?」
「痛んでなくて綺麗な髪だな」
その一言で自分の髪を好きになれそうなくらい嬉しくなる。
「……ありがとう」
今まで自分の髪なんて特に好きだと思ったこともないし、特別な手入れもしたことがなかった。