初恋のうたを、キミにあげる。
「な、なんでそんなこと」
「まあ、聞いたところでそうなれるわけじゃねぇけど」
「そうなれる?」
「なんでもない」
答えに困っていると森井くんはそれ以上なにも言わずに、好きなアーティストの話をし始めた。
話題が逸れてほっと胸を撫で下ろす。
「でさ、時々このアーティストのラジオ聴くんだけどさ、即興ソングがすごいクオリティ高いんだよ」
「私もそれ聴いたことある。あんな風にすぐにできるの天才だよね」
「お題も周囲の思いつきで適当に出されてるもんな」
好きなアーティストの話なら、私もたくさん話題がある。
森井くんにおススメしたいアーティスト、森井くんが普段聞いている曲。
話したいこと、聞きたいことが溢れて弾けていく。
言葉って不思議。
今まで怖くて、窮屈で思うように話せなかったのに、今は早く外に出たがっている。
伝えたい。教えてほしい。
そんな風に思えるようになって実行できるようになったのは、やっぱり森井くんのおかげだと思う。