初恋のうたを、キミにあげる。



鏡を見なくても、視界に映る髪の毛はちゃんと黒に染まっているのがわかって安堵する。無事に元に戻ってよかった。


失敗しちゃったけれど、行動を起こせたことは、少しは変われているよね。以前の私は行動にすら移せなかった。


今度から髪色の件は相談してみよう。きっと森井くんなら聞いてくれる。

私、森井くんに頼りすぎかな。

微睡んでいると、ドライヤーの音が消え、温風が止む。




「そういえば、本当はどんな色にするつもりだった?」

「森井くんの」

「俺?」

「うん。森井くんと同じ色にしてみたかったの。……チョコレート色で綺麗だなって思ってて」


最初からどのメーカーの色にしたらいいのか聞いておけばよかったな。

そしたら失敗もせずに……でも、そしたらこうしてここにいることはなくなっていたよね。



あれ、どうしてだろう。迷惑かけずに済んだはずなのに、ここにいられないのは寂しく思うなんて変なの。


高校で初めて友達の家にお邪魔するからかな。

放課後にこうして会う友達って、舞花ちゃんたち以外にはいなかったから。





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