黄色い履歴書

愛の証

この感じ

前にもあったこの感じ


シキはタケルと出会った時の事を思い返していた


あの時

タケルは迷っていたはず
苦しんでいたはず


沈黙にも意味がある。

でもなぜかあの時と
   今の“沈黙”は

全くの『他人』
そんなような気がして

シキはその空気に
   冷たささえ感じた


 “愛されなかった幸せ”


  “愛された不幸”


もしこの世に2つしか選択肢がなかったとしたら

人はどちらを選ぶのだろう



早く気づいて

    シキの愛に

    自分の居場所に









冷たい空気を一気に遮るように

どしゃ降りの雨が
    地面をたたいた

何粒もの水玉は

何度も 何度も

地面に叩きつけられ



何度も 何度も

跳ね返って

地をたたきまた跳ね返る



シキは水玉から目が離せず
むしろもっともっと近づきたい

そう思うと

タクシーの窓を全開にして
雨の中へと身を乗り出した
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