0.0000034%の奇跡
「それなりの覚悟はあるんだろうな?」
頭上から聞こえる低い声。
「はい!一生かけて守ります!」
「頭上げなさい」
ゆっくり前を見ると一度だけ頷いてくださった。
「芹が生まれた時、今の君と同じことを思った…今日までもその思いは消えた事はないしこれからも続くだろう。まだふつつかな娘ではあると思うが、泣かせたりしたら承知しないぞ?わかったな?」
「……はいっ!」
「娘のこれからを宜しく頼む」と逆に頭を下げられた。
彼女と手を取り合い喜ぶ。
「ありがとうございます!」と言いながら許してくれた事が何より嬉しくて泣きそうになった。
「本当に本当に泣かすんじゃねぇぞ」と何度も念押しされ、横からお義母さんと彼女に怒られていた。
愛情をたくさん注がれて育ってきたんだなってよくわかる。
後でこっそりお義母さんが
「あの人、うちの父に結婚の挨拶した時言われた事と同じセリフをあなたに言ってたわ」と教えてくれた。
当時のご自身と僕を重ねてくださったのか、喜びと感謝で胸が熱くなる。
その後の両家の挨拶も無事に終わり、婚姻届提出へ。
僕たちは夫婦になった。