0.0000034%の奇跡
「そうだ…これも欲しかったんだった…無理だ、予算オーバー」と真っ青。
気を取り直して
「見るだけ見てみようよ」と出してもらおうとしたら。
「ダメ、触ったりしたら余計欲しくなる〜今日は帰ろう」
ピークに達しつつある物欲を振り払うかのように、突如店員さんの手を握りしめたからギョッとした。
僕以外気安く触っちゃダメでしょ!
「また来ます!絶対絶対また来ます!」と顔が近い!
いやいやいや!
ギターのことになると人変わり過ぎ!
それと帰るのは待たれよ!
思わず腕を引っ張って足止めをする。
「ダメだよ智くん、私これ以上居たら衝動買いしちゃうから」と全然こっちを見ようとしない。
こういうの慣れていないからやっぱりグダグダだ…。
店の出口を塞いで無理やりギターケースの前まで戻る。
「お願いだから、一度手に取って」
もうそろそろ気付いて欲しいんだけどな。
固く閉じた目を恐る恐る開く君。
店員さんが差し出したケース、意を決して受け取る。