0.0000034%の奇跡



これ以上言うと泣きそうだから
慌てて店を出た。
案の定泣いちゃう彼女を見て
歩きながら笑う。



「絶対絶対大切に使う!本当嬉しい、ありがとう!」



「それは良かった」



少しくらい男にさせてください。
いつだってその笑顔が見たいから。
僕を虜にさせるその歌声を、
これからもずっとそばで聴かせて欲しいから。



お気に入りのソファーで優しい音色が鳴り響く。



キッチンで料理をしながら彼女のギターがBGMだなんて、なんて幸せ者なんだ。
料理担当の僕は彼女と一緒に口ずさみながら仕上げていく。



お、レミオロメンの3月9日だ。
歌のチョイス、最高だよね。
好きな曲もよくかぶってるし。
高音もブレてなくてやっぱり上手い。



かと思えば、食事の支度が出来上がった頃には彼女はギターではなく、インプラントの勉強してたりするんだ。
丸い縁の眼鏡をかけて参考書やパソコンを広げている。
そのメリハリのつけ方には正直頭が下がる。





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