0.0000034%の奇跡
「えっと、ただ今紹介に預かりました伊藤芹と申します。美樹とは卒業してからなかなか会えてなかったんですけど、高校時代は毎日のように遊んでいました。大学は別々でしたが結構な頻度で会ってましたね。その遊び仲間の幸せの門出第一号である美樹と大輔さんに贈りたいと思います。まさか歌うとは思わなかったので途中で間違ったりしたらすみません。ではリクエストいただきました曲、斉藤和義さんの歌うたいのバラッド、聴いてください。」
え?マジで?
女性キーで歌うとかめちゃくちゃカッコイイじゃん。
男でも難しいのに大丈夫なのか?
なんて、心配して損した。
会場に響き渡るギターソロ。
上手いって一発でわかった。
え?その顔でギターも上手いの?
続々と周りは携帯やビデオカメラで撮りだす。
イントロから歌い出した瞬間、鳥肌が立った。
息を呑むっていうの?
皆、時が止まったかのように動けない。
真っすぐ彼女だけを見て耳を傾けている。
細く小さな体から織り成す美声。