0.0000034%の奇跡



真剣な表情も優しい表情も、
声高く笑ったり、
「うま…!」と目を丸くして食べてくれる表情も、クルクル変わる表情は毎日見てても飽きない。
僕は今、その全てを独り占め出来てんだよなぁ。
感慨深い。



日曜の昼下がり。
僕の店に現れた君は、スタイリスト全員の手を一瞬止めてしまうほどキレイだった。



「俺がいきます」と続々と立候補していくスタイリストたちを横目に、僕と目が合った君は優しく微笑む。
まさか僕のお客様だとは思わなかっただろう。



「いらっしゃいませ」と言ったら照れたように笑う。



ちょうど信頼出来る店長が近くに来てくれて紹介することになった。
あれ?店長の顔つきが違う。
もしかして狙ってる?
しまった、仕事では尊敬出来るが
女性関係はだらしがなかったんだった。



「店長、えっと……僕の恋人の伊藤芹です」



「うんうん、そうなんだぁ……って、えぇっ!?」







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