0.0000034%の奇跡



想定内の反応だ。
皆が狙わないように予防線はきっちり引いとかないと。
「はじめまして」と挨拶する彼女。
振り返って他のアシスタントたちに
勝ち誇った顔が出来て気持ちいい。



案の定後で皆から羨ましがられて質問攻めだ。
大丈夫、慣れてる。
でもこれでトップスタイリストの威厳は保てるだろう。
なんてね。



「やっと槙田さんのプライベートが見えてきた」って?
これ以上は見せないけどね。
「手、出すなよ」と真顔で脅しておく。



初めて見せる仕事での顔。
ハサミを滑らせながら集中してると、
視線を感じて彼女と目が合う。
口元が緩みそうになるのを必死に堪える。
好きだなぁ、はにかむ姿。



すると再び現れた店長。
何だか嫌な予感がする。
耳元で言われた事にその予感は的中。
肘でつつかれ笑顔を見せてくる。
やっぱりな……。



「芹、無理を承知でお願いするんだけど…うちのサロンモデルになってくれない?」







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