0.0000034%の奇跡
「芹…気をつけて、行ってらっしゃい」
心の中では逆のことを言ってる。
行かないでほしいって。
ヤバい、何か泣きそうだ。
駄々っ子みたいで恥ずかしい。
カッコ良く見送ってやれない。
たかが3日会えないだけでこのザマかよ……情けない。
「大好きだよ、智くん」
僕だってどれほど愛しているか……
今一番身に沁みてる。
わかってたことなのに。
帰って来たら言おう。
だから今は笑顔で見送るんだ。
今度は僕からキス。
「愛してます、芹……待ってるよ」
ちゃんと待ってる。
無事に帰って来たら、僕からの大事な話聞いてね。
小さなキャリーバッグを引く彼女を玄関先まで見送る。
午前中は通常通り診療して、午後には新幹線で向かう。
最後の抱擁後、笑顔で君は「行ってきます」と言った。
見送った後、不覚にも泣いてしまったよ…
会えない夜がこんなに苦しいなんて…
いかに自分が惚れていたか痛いほどわかる。
いかに自分が弱いことも。